レザーグッズについて知ろうと思ったら、ヌメ革は一番最初に知っておくべきスタンダードな革といっていいでしょう。
ヌメ革は革財布における基本であり基礎であり原点なのです。
そしてヌメ革の最大の魅力は、なんといっても経年変化(エイジング)が楽しめること!
とはいえ、一口にヌメ革といっても作っているタンナーによって雰囲気が違ったり、種類や加工方法によって使い勝手が違ったりもします。
今回はそんな「ヌメ革」について解説します。
この記事に書いてあること
そもそもヌメ革ってどんな革?
ヌメ革の定義はいろいろありますが、基本的には
- 植物性のタンニン鞣(なめ)し革であること
原点はコレです。
植物性のタンニンで鞣しているからこそ、ヌメ革なのです。
また、
- 染色・表面仕上げをしていない革であること
このようにヌメ革の定義として、ナチュラルカラーの革のことを指しているメーカーもあります。
最近ではブッテーロやミネルバリスシオのように色付きのヌメ革もたくさんありますし、ヌメ革=ナチュラルカラーとはいえませんが、一つの判断基準にしてもいいと思います。
問屋さんと販売店で定義が違う
もう少し詳しく説明すると、ヌメ革の定義って難しくて、問屋さんと販売店で説明が違ったりします。
皮から革になるまでには下記工程がありますが、
- 革を鞣して乾燥した革に水分を含ませて革らしく馴染ませる「味入れ」
- 油脂を使って柔軟性を加える「加脂」
- 染色
- 仕上げ
など様々な工程があるのですが、問屋さんなどでは「加脂」まで行った革のことを「ヌメ革」と呼んだりもします。
製品化されたものを買って使う人にはあまり関係のない豆知識ですが、レザークラフトをしたい人なら覚えておいてもいいかもしれませんね。
まぁ、ぶっちゃけると革は呼び方の定義が全然定まっていないため、言ったもの勝ちみたいなところがあるんです。
「ヌメ革」「クロム革」どう違うの?
「皮」から「革」にするためには、鞣(なめ)すという工程が必要不可欠になります。
動物から剥ぎ取った状態の皮だと腐っちゃいますからね。スーパーから買ってきた鶏皮なんてすぐに冷蔵庫へ入れるでしょ?
なので、「毛皮から、毛と脂肪を除いて皮を腐らないように性質を変化させる」鞣しと呼ばれる工程が必要になります。
鞣し方には大きくわけて
- 植物性タンニン鞣し(ヌメ革)
- クロム鞣し(クロム革)
この2種類にわかれます。ほかにも合成鞣しとか色々あるけど、ブーツ以外であんまり見ないので割愛します。
で、この鞣し方で革の持つ特徴が大きく変わってくるわけです。
- ヌメ革は分厚くて固くなり、水分に弱い
- クロム革は薄くてしなやか、水分に強い
タンニン鞣しはミモザなどから取れる植物性の「タンニン」を使った古来からの方法。
逆に、クロム鞣しは薬品を使って鞣す方法で、100年ほど前から始まった比較的新しい手法です。ヌメ革の弱点が全部補完されています。
ちょっとだけクロム革の解説も
ヌメ革は後で説明しましょう。まずはクロムレザーの概要から。
- 大量生産でコストがかからない
- 鞣す時間が短い
- 薄くてしなやか
- 水や変化に強い
などなど、クロム革はヌメ革とは全く逆の特徴を持っているんですね。
昔ながらの工法で作られたヌメ革なのですが、鞣す時間が長く、さらには水やキズに弱いという特徴がありました。
そこで技術が進んで開発されたのが「クロム鞣し」。
おかげで、ソファーなどの家具や、革靴、車のシートなどに使える、薄くて丈夫な革が作れるようになりました。
ぶっちゃけヌメ革のソファーとか革靴なんて、そこそこ手入れしててもシミだらけになっちゃって見てられませんからね。クロム革のもんですよ。
それとは逆に、革小物系になるとクロム鞣しの丈夫な部分が「エイジングしにくい!」といって敬遠されているわけです。もう無茶苦茶ですね。笑
ヌメ革の特徴
さて、鞣しの種類が分かったところで、次はヌメ革のおもな特徴を説明します。
- 淡い茶褐色(肌色)
- 厚みがある
- キズが付きやすい
- 日光や油分で色が変わる
- 使っていると艶が出る
- 水に弱い(水滴が跡になる)
これらがヌメ革の特徴です。
ヌメ革はクロム革とは違って繊細な革なので、使っているとキズは目立ちますし、紫外線による色の変化も起こります。
その変化を楽しめるのがヌメ革の楽しいところなんですよね。
革が好きな人は、この経年変化(エイジング)のことを「革が育つ」といって喜びます。
ジーンズの色落ちみたいなものです。新品はダサいし、使い込まれたものはカッコいいのです。これが男心です。
ヌメ革は小物や財布に向いている
クロム革とは違って、硬くハリのある革になるのがヌメ革です。
ということは、財布、手帳、ベルトなど、革小物に向いているわけです。
とくに革財布は素材が硬い分だけ薄く作ることができますし、手で触ることによって起こるエイジングも相まって人気が高いです。
レザークラフトで使いやすい
- 初心者が加工しやすい
- カービング・スタンピングができる(刻印が打てる)
- コバを磨いて仕上げやすい
また刻印やカービング、成形などの加工に向いているので、レザークラフトによく使われてます。
クロム革と違って厚みがあるため、菱目打ちがしやすかったり、コバを磨きやすかったりと、作った感が出やすいのも人気の秘密かもしれません。
僕も自作のレザーグッズはヌメ革で作ることが多いです。
さぁ、次はこの「経年変化ってなに?」ってところを説明します。
ヌメ革で一番の楽しみ!「経年変化(エイジング)」
ここまで読んで、「クロム革の方がいいかも。」って思う人も出てくるはず。
安心してください。ヌメ革の魅力は、クロム革には出来ない経年変化(エイジング)するという点に集約されています。
ヌメ革はエイジング、エイジングはヌメ革。全は一、一は全。
革財布をヌメ革で作る理由の80%以上は、「エイジングを楽しむため」といっても過言ではありません。
上の画像のように、日焼けしたり、オイルを入れたり、手入れをしているうちに色の変化を起こしてきます。
さぁ、ここからは垂涎のエイジングについて語っていきましょう。
1:アメ色へのエイジング
使うほどに色がどんどん変わっていくのがヌメ革のエイジングの1つ。みんなめちゃくちゃ好きですよね。
購入当初は肌色だったヌメ革が、日を追うごとに焼けたり、手の脂を吸い込んだりして色が変わってきます。
また、水に弱いので、防水加工をしていないと水シミによる色の変化も起こります。
これらは表面加工を施していないヌメ革だからこその変化ですよね。
そして手入れをこまめにしていると、キレイな飴色へとエイジング変化していくんですよね。
ヌメ革が好きな人の一番好きな理由がこの「色のエイジング」と言っても過言ではないと思います。
2:カラダに馴染むエイジング
買った時から何年も使っているうちに自分のクセや使い方で変化していきます。
ジーンズに履きジワが入って動きやすくなってくるように、ヌメ革もドンドン自分のカラダに馴染んで使いやすくなります。
そして、最終的には世界に1つだけの自分のモノが出来上がるわけですね。
使えば使うほど、自分だけの変化が起こって愛着が湧いてくるのがヌメ革の魅力ですね!
3:キズがついてもエイジング!
自分の持ち物にキズがつくのってショックですよね。ですが、革製品においてはそのキズもエイジングの1つ。
ヌメ革は、どんなに大切に使っていても軽く引っ掻いてしまうだけでキズが付いてしまう繊細な革。
いくら大事に使っていてもスリキズぐらいはついてしまいます。
オイルを入れると消えるような薄いキズから、ザックリ入ってしまった深いキズまで、全部ひっくるめてエイジングです。
エイジングっていうと色が変わったり馴染んだりっていう部分を見がちですが、やはりキズまで愛してこそ本物でしょう。
じゃあ、次はキレイなエイジングのさせかたを説明しましょう。
ヌメ革をキレイに経年変化させるためには
ここまで読んだみなさんは、きっとヌメ革の魅力に取り憑かれたことでしょう!
ヌメ革っていうのは愛情をそそぐと、ちゃんと返してくれるいい子なんです。
では、キレイにエイジングさせるためのコツを紹介したいと思います。
ヌメ革の使い始めは日光浴が大切
日光浴に関しては、儀式みたいなものなので
「初めに色を一段階エイジングさせたい」
「自分で育ててる感じを楽しみたい」
「使い始めのキズが目立たないようにしたい」
ぶっちゃけるとテンションが上がります。革好きはみんなやります。
日光浴の効果は?
日光浴をすることで得られる効果は4つあるといわれています。
- シミなどが目立たないようにコーティングする
- 革の傷や汚れが付きにくくなる(目立たなくなる)
- 色のツヤやムラの差を少なくする
- エイジングを早める
懐疑的な人もいるのですが、個人的には日光浴させた方がいいです。テンションが上がります。
日光浴の方法は?
ヌメ革を日光浴させるというのは、読んで字のごとく「日に当てて日焼けさせること」をいいます。
日光浴といってもガンガン日に当てる必要はなく、カーテンを開けて窓から差し込む光を当てる程度で大丈夫です!
結構乾燥するので、焼く前にオイルを塗ってから、夏場は1週間程度、冬場で2週間程度、日に当てていればそれなりに焼けてきます。
コンガリ焼く必要はなく、色の変化が納まれば使いはじめても大丈夫です。
最悪、時間はかかりますが蛍光灯の光でもそれなりに変わってきますよ。
オイルメンテナンスをしたほうがいい
ヌメ革を飴色に経年変化させるためには、オイルメンテナンス(レザークリーム)が必須になります。
人間の肌と一緒で乾燥していると、カサカサしてきたり、最悪はヒビ割れを起こしてしまいます。
革によっては大丈夫だったりしますが、タンナーによって最初に含んでいるオイルの量が変わってきたりするので、できるだけオイルは足してあげましょう。
オイルを入れると色が濃くなるので、色合いが気になる人はそこだけ注意してください。
ヌメ革に最適なオイルは?
革用のレザーオイル・クリームは色々と販売されていますが、基本的にはどれを使ってもそんなに変わりません。
また、有名メーカーから出されているレザークリームを使えば大きな問題もおこりません。
- コロニル
- サーフィール
- モウブレイ
- ブートブラック
このあたりのメーカーから、ワックス成分の少ない栄養クリームを使っておけば大丈夫。
初めてでどのクリーム塗ればいいか分からないという方は、「コロニルの1909シュプリームクリームデラックス」がオススメです。
僕も実際に有名どころのクリームをいくつか買って使ってみましたが、シュプリームクリームは一番使い勝手がいいです。断言できます。
あとは、ラナパーやマスタングペーストなどのレザー用品向けクリームもいいらしいですね。これ書いてて気がついたんですけど、まだ使ったことがないので今度買ってみます。
防水スプレーで汚れとシミを予防!
よりきれいなエイジングを目指すなら防水スプレーもあったほうがいいですね。
防水スプレーは、ちょっとした汚れや水滴をバシバシ弾いてくれるので出来るだけ汚したくない方は、買ったとき忘れずにやっておきましょう。
スプレーしたものと、スプレーしていないものを比べるとエイジングの差は歴然。
防水スプレーも「コロニルの1909シリーズ」をオススメしています。※1909はコロニルのハイグレード品という意味です。
先程紹介したオイルと同じメーカーなので、初心者の方でも使いやすいです。
スプレーはクリームと比べて量が少ないのがちょっと残念。
↓でスプレーの塗り方レビューしてます。
まとめ
さて、ここまでヌメ革について説明してきましたがいかがだったでしょうか?
使う人によって様々な顔を見せるヌメ革。
興味を持った方は、まずは財布やカードケースなどの小物から入っていくのがオススメです!
普段使う小物だからこそ、使っていくうちに自分に似ていく感じがして凄く愛着が湧きますよ。
みなさんもぜひ自分だけの財布を育ててみてください。