革好きの方にとって、コードバンは憧れの革でいつかは手に入れたいなって思っている方も多いはず!
コードバンの光沢や質感は牛革とは異なり、独特の雰囲気があります。
ですが、初心者が安易に踏み込むと火傷してしまうのが、この革の怖いところ。
ショップ店員さんも買う前に「気難しく繊細な革」ということは教えてくれたりしませんから、コードバンを手に入れて後悔している人も多いはず。
「高いもの=丈夫で強い」
という日本人の高まった信仰を潰されてしまうわけです。
そんなコードバンの良いところ、悪いところ、牛革との違いを徹底的に解説していきたいと思います。
この記事に書いてあること
コードバンの弱点
まず最初にお伝えしたい!これだけは伝えたい!
画像は僕の持ち物、YUHAKUのコードバン長財布です。型番は忘れましたが水染めコードバンを使った良い財布です。
で、この財布を見てわかると思いますが、水ぶくれがすごいでしょ?
この財布は記事のためにわざと水ぶくれを作りましたが、普通に使っている人でも我慢して使っている人は結構多いです。
さらにいうと、防水スプレーを使うとコードバン独特の風合いが消えてしまうため、無防備な状態で使うしかないのが現状だったりします。
水にめちゃくちゃ弱い!!
コードバンは耐水性がなく、僕の財布のように水滴が当たればその部分に水ぶくれが出来てしまいます。
水を含んだときに起毛した状態へと戻ろうとしているだけなのですが、「ちょっとシミができた」とかそういうレベルの話ではないので、初心者向きではないんですよね。
この水ぶくれを知らない人が、値段が高いから良い財布だろう!と買ってしまって後悔しまくっているわけです。
革靴マニアの人たちも「雨の日は絶対に履かない」など、水分に頭を悩ませているようです。
一応、手入れをすれば治るんですけど、知らずにそのまま捨ててしまう人もいるようですね。
水ぶくれが出来たときの対処法は後述します。
キズにも弱い・・・!?
コードバンは革の中でも最高クラスの強度と言われています。
強度だけで言えば牛革の3倍の強度を持っているんです!
ですが表面はとても滑らかなので、どうしてもキズが目立ちます。表面がツルツルしているスマホのキズが目立つのと同じ理屈です。
キズが付いてしまったら、クリームを使って手入れすることで目立たなくはなりますが、傷を完全にリセットすることは難しいです。
革小物は、大切に扱うのも大事ですが、キズもアジのうちだと納得してしまうことも大事ですね。
弱点はあるけど・・・コードバンのエイジングは革の中でもトップレベル!
コードバンにはキズや水滴など天敵も多いんですけど、エイジングが極上なんですよね。
とくに、「銀面がないので細かいシワができないの」と、「独特のヌルヌルした光沢」のおかげで、革ではトップクラスのカッコよさを見せてくれます。
この輝きこそコードバンの真骨頂といっても過言ではないでしょう。
よく手入れされて飴色になったヌメ革や、ブライドルレザーなどもそこそこ良いエイジングをするのですが、ぶっちゃけコードバンの光沢は比べ物にならないくらいヌルっと輝きます。
硬くてエイジングしにくくて手入れも大変だけど、それでも革好きな人たちが最終的に行き着くのがコードバンなのです。
コードバンの基礎知識をおさらいしよう
「コードバンは馬のお尻の特殊な部分を鞣した革だよ」革に興味があるのなら、これくらいなら知っているかもしれません。
ここから少しだけ、コードバンの基本的なところ説明します。知っている人ももう一度おさらいしてみましょう。
コードバンは貴重な革!
コードバンは食肉用として飼われている馬のお尻から取れる革です。
フランス(だったかな・・・?)の、馬を食用にしている地域があって、タンナーさんはそこから仕入れて加工しているようです。
しかしながら、コードバンが取れる馬が減ってきたり、コードバン靴の需要が高まったり、といった理由から年々希少になっています。
そのため値段もグイグイ上がってきていますね。
革は基本的に「食肉の副産物」として生産されているものなので、コードバンの生産量には限りがあるわけです。
エキゾチックレザーは別として、革を取るためだけに動物を育てることはありませんから。
もし、いつかコードバンを入手したいなと考えているなら、早めに手に入れることをオススメします。
じつは起毛革
コードバンって性質だけで考えるとスエードのような起毛革に近いんです。
というのも、一般的な革には表面と裏面がありますよね。革業界では表面のことを銀面(ぎんめん)、裏面のことは床面(とこめん)と呼びます。
そして、コードバンにはこの銀面がありません。
普通の革なら表面が一番強くて丈夫なのですが、コードバンは銀面から数ミリ下にある「コードバン層」と呼ばれる層の方が丈夫なんです。
そのため、バフがけ(ヤスリがけ)して元々の銀面を取り払ってしまうんです。
そして、バフがけ後の毛羽立った起毛をグレージング(圧をかける作業)で寝かしてツヤを出しているのがコードバンなのです。出来たばかりのコードバンはザラザラしています。
なので当然のごとく雨や水滴など、水分に弱いんです。起毛面から吸い込んでしまいます。
ちなみに革業界ではコードバンの塗装されている面(表面)のことをカネ、裏側をギンと呼ぶそうです。一般的には通用しない豆知識です。
同じコードバンでも値段が違うのはなぜ?
一言でコードバンと言っても価格帯が大きく違うことに疑問を感じた方も多いのでしょうか?
大きくわけると3種類あります。これのおかげでコードバンの評価がバラバラになっていて悲しい限りです・・・。
- オイルシェルコードバン(ホーウィン社)
- 水染めコードバン(新喜皮革・レーデルオガワ)
- ウレタン塗りコードバン
コードバンをランク分けすると、トップクラスに君臨するのは、「ホーウィン社のオイルシェルコードバン」になります。
その希少性ゆえ、ほとんどが革靴に流れてしまうらしく、革小物ではあまり使われません。財布でチラホラ見かけるぐらいです。
次点で、「新喜皮革の水染めコードバン」です。新喜皮革のものをレーデルオガワが仕上げたものはワンランク上がります。
この2社が作っているものが実質、革マニアたちが「コードバンと認識している革」です。
それ以外は硬いだけのただの革です。透明感のあるエイジングとは無縁な、ペンキ塗りのただの革です。
見分け方はカンタンで、水ぶくれすれば良いコードバン、水を弾いたらウレタン塗りコードバンです。表面がコテコテに塗られてるので分かりやすいです。
これって革系のブログを書いている人ですらわかってない人が多いので、知っているだけでちょっと優越感に浸れるかも。
コードバンのピット鞣しができるのは世界で2社だけ!
革を鞣す時の手法として「ピット鞣し」と「ドラム鞣し」の2種類の鞣し方があるのはご存知の方も多いでしょう。
そしてじつは、上記でも紹介した、アメリカの「ホーウィン社」と日本の「新喜皮革」のコードバンはピット鞣しなのです。
繊維がほぐれてしまうドラム鞣しと比べて、ピット鞣しは革をより堅牢に鞣すことができます。これが両社の人気の秘密かもしれません。
また、ピット鞣しに使われるピット層は、今では持っているタンナーが少なくて、設備自体も貴重なものになっています。
最近ではコードバンを扱うタンナーも増えてきたようですが、品質から見てもホーウィンと新喜皮革に並ぶものはありません。
これが、コードバンを鞣せるタンナーが世界で2社しか無いと言われる所以です。
値段の違いは原材料費の違い
ホーウィン社と新喜皮革がツートップだといいましたが、じつはホーウィン社のオイルシェルコードバンは値段が頭1つ抜けています。
これには需要と供給な部分もあったりするんですけど、革は関税が高いっていうのも理由の1つだと思います。
もし、新喜皮革が国内生産じゃなければ、もしかしたらホーウィン社よりも高くなっていた可能性も。と考えるとゾッとしますね。
ちなみに、両面コードバンで作られている財布なんかは、原価が増えるので値段が倍ぐらいになってたりします。
コードバンの手入れ方法
コードバンは水に弱くキズが付きやすいデリケートな素材ですが、手入れ自体はそこまで難しくありません。
普段はクリームを薄く塗って、柔らかい布やネルなどで拭き上げるだけでOKです。
心配ならコードバン用のクリームを使おう
水分の多いクリームを塗りすぎてしまう表面が荒れる可能性もあるため。できる限り薄くまんべんなく塗っていきましょう。
コードバン専用のクリームもありますが、靴用のクリームはワックスが多いので革小物はよく考えて使ってください。
僕のオススメはこのサイトでしょっちゅう出てくる「コロニル1909 シュプリームクリームデラックス」です。
乾きすぎてしまうと馬油などで油分を足すこともありますが、普段はこれだけでOKです。
防水スプレーは使わないほうがいい
通常なら、革製品に防水スプレーはするべきなのですが、コードバンに関しては防水スプレーを使いません。
コードバンの財布を使い始めるときは、クリームかワックスで手入れをするだけに留めておきましょう。
というのも、防水スプレーをかけてもスプレーの効果が薄かったり、逆に光沢がなくなってしまうこともあるようです。
個人的には起毛が寝にくくなるような感じがします。手入れが大変になります。
防水スプレーが使えない革なので、水には最新の注意を払わなければなりませんね。
コードバンには水が大敵という理由がよく分かります。
※コードバン専用の防水スプレーがオールデンから発売されているそうです。(今度レビューしますね)
水ぶくれが出来た場合は?
- 水ぶくれが出来ないように水分や汗からは遠ざける。
- 水滴が付いてしまったらすぐに乾いた布などで吸い取る。
コードバンを手にしたら上記を徹底します。本当に手がかかる困った子です。
もし、これでも水ぶくれができてしまったら。。。
一度全部水で濡らしてしまうという方法もあるようですが、素人の方にはオススメしません。
軽度の水ぶくれなどの場合は、クリームを塗ったあと「レザースティック」を使いますが、高くて躊躇したので僕は「かっさ棒」を使っています。
まぁ、ツルツルしていて硬ければ、瓶の蓋とかスマホケースの角とか、ぶっちゃけなんでもいけます。※目立たないところで試してくださいね。
水分によって起毛が起きてしまったところを、圧力をかけて繊維を寝かせることで目立たなくなるわけです。
ほかにも色々裏技はあるので、試してよかったら記事にします。
ザラつきの直し方
財布やベルトなどはあまり見かけないかもしれませんが、コードバンは屈曲部にザラつきが発生します。いやーなんてめんどくさいんだ。
これも水ぶくれと同じで起毛部分の毛が起きることによって出てくるのですが、猫の舌みたいにざらつくため、手入れしてすぐに出てくると若干イラつきます。
今まではクリームで寝かせるしかない、という結論になっていましたが、最近では「皮剥き」という手法を使えばかなり軽減できることがわかっています。
詳しくはインスタで「コードバン脱皮」と検索してみてください。
コードバンの財布はどこで買える?
コードバンはその希少性から、特定のブランドでないと手に入れることが出来ません。
とくに最上級とされる「ホーウィン社のオイルシェルコードバン」は卸先が極端に少ないため、上記ブランド以外で買うことは難しいです。
また、ほとんどの商品は売り切れで入荷未定という、今すぐ買えるものではなくなっています。
もしすぐに今すぐ欲しいなら国産の水染めコードバンをオススメします。
国産なので海外産のオイルシェルコードバンと比べて見劣りすることもありませんし、いまのところショップも入手しやすいようで在庫があることが多いです。
上記のブランドに加えて、土屋鞄、万双、キプリス、などが取り扱い店の中でも有名どころになります。
まとめ
最後にコードバンのポイントをまとめたいと思います!
- 馬のお尻の革を使った革
- 生産縮小・需要拡大のおかげで希少性が高い
- 鞣し方やブランドによって価格が違う
- 水やキズに弱い
- 防水スプレーは使わないほうがいい
- エイジングは革の中でも最高の輝き
この辺りでしょうか。
初心者向きではありませんし、とにかく扱いが難しいのですが、使いこなせると最高にオシャレです。経年変化も極上です。
革のダイヤモンドと呼ばれるコードバン。
年々希少性は上がってきているので「いつか絶対に欲しい!」という方は早めに手に入れることをオススメします。